痛風と心臓病
暦の上ではまだ春ですが、ベトナムはすでに夏のような蒸し暑さに包まれています。こ
の環境では、仕事終わりに冷えたビールについ手が伸びてしまう、という方も多いのでは
ないでしょうか。プリン体を多く含む酒類を大量に摂取すると尿酸値が上昇し、痛風の原
因となります。ベトナムの食事は一般に健康的と考えられていますが、プリン体の多い肉
料理や塩味の強い味付けで腎臓に負担がかかるものもあり、これらは尿酸値上昇の下地に
なり得ます。尿酸値が7mg/dlを超えると尿酸は結晶化しやすくなり、血液がよどみやす
い部位(足指の付け根など)に蓄積し始めます。飲酒や激しい運動によって尿酸の結晶が
増大したり壊れたりすると、そこに免疫細胞が集まり、炎症反応によって激烈な痛みが生
じます。
日本では2018年に循環器対策基本法が制定され、心臓病につながるリスク疾患(高血
圧症・高脂血症・糖尿病・高尿酸血症)の早期発見と早期治療に、これまで以上に重点が
置かれるようになりました。高血圧症・高脂血症・糖尿病については国内外で多くの臨床
試験が行われ、この10年間で心臓病を予防できる新薬が次々と開発されています。一方
で、高尿酸血症の患者さんが尿酸値低下療法を受けることで将来の心臓病を予防できる、
という研究報告はなく、高尿酸血症をどのように治療すべきかについては議論が続いてい
ます。現在確かなことは、①高尿酸血症の患者さんのうち痛風発作を起こした人は心臓病
を起こしやすいこと、②痛風発作を起こした患者さんに限れば尿酸低下療法が心臓病の予
防に有効であること、この2点です。
これまで痛風は関節の病気と考えられてきましたが、CTスキャン技術の進歩により、
心臓の動脈硬化が生じた部位に尿酸の結晶が蓄積することが分かってきました(図1)。 特
に、心筋梗塞など重篤な心臓病を起こした人ほど血管内に尿酸結晶が多く蓄積しており、
痛風と心臓病の直接的な関係性にいっそう注目が集まっています。
尿酸値を低下させる治療は、痛風を起こしにくくする、腎臓の機能を保つ、といった点
でも重要です。健康診断で尿酸値を把握することは、痛風や腎臓病を防ぐきっかけとな
り、さらに痛風を経験した人にとっては将来の心臓病を防ぐための第一歩にもなります。
日々の食事や飲酒、運動習慣を少しずつ見直しながら、無理なく続けられる“自分に合った
健康管理”を整えていきましょう。

内科医 西宮健介



